何ができる? エッジコンピューティングとは
あらゆるモノや情報が当たり前のようにネットワークにつながるようになったことで、私たちの生活は便利で快適なものになりました。その一方で、世の中のIoT化が加速するのに伴い、生成されるデータは日々膨大になっていき、低遅延やネットワーク負荷の軽減、セキュリティ強化といったさまざまな課題も生まれています。
そこで注目されているのが「エッジコンピューティング」です。今回は、世界中の注目や期待が集まる「エッジコンピューティング」について、詳しく解説します。
エッジコンピューティングとは
これからのIoT時代に、欠かすことができない技術のひとつとして注目されている「エッジコンピューティング」。IoTデバイスが生成した膨大なデータを、クラウドなどの遠方に送信するのではなく、IoT端末などのデバイスそのものや、デバイス付近に設置されたサーバーでデータの処理が行われる、分散処理能力を特徴としたコンピューティングの概念を意味します。
従来のIoTシステムでは、サーバー側ですべての処理を実行していたため、通信容量が大きなデータでは遅延が発生することがありました。それがエッジコンピューティングでは、サーバーとデバイスの両方で分散してデータ処理を実行するため、通信容量を小さく抑えることができ、遅延を防げるというわけです。
このように、エッジコンピューティングを取り入れることによって、IoTをより高度化することが可能ですが、一方で導入するためにはコンピュータリソースやデータベースを開発するための開発環境が必要になるため、初期コストが高くなることも理解しておく必要があります。
エッジコンピューティングが注目される背景
なぜ今、エッジコンピューティングが世界中の注目を集めているのでしょうか。その背景には、IoTの普及によって生じたさまざまな課題解決に対する期待が大きく影響しています。
課題の一つとしてあげられるのが、ネットワークにかかる負荷です。IoT時代になり、あらゆるモノがネットワークにつながるようになったことで、常に膨大なデータが発生し、クラウドやデータセンターなどに送られています。その結果、ネットワークに大きな負担がかかってしまっているのです。
また、従来のクラウドではIoTが求める高いレベルの処理スピードに対応できず、データが送られてくるまでに生じる通信の遅延時間「レイテンシ」の大きさも課題となっていました。さらには、IoTはインターネットを介してクラウドに接続するため、不正アクセスや情報漏洩といったセキュリティ面でのリスクも重要な課題のひとつでした。
エッジコンピューティングのメリット
エッジコンピューティングは前項であげたIoTの普及によって生じたさまざまな課題を解決することが期待されています。エッジコンピューティングによってもたらされる主なメリットは、課題解決につながるものと考えられています。詳しく見ていきましょう。
通信遅延の軽減
エッジコンピューティングでは、データが発生する場所のより近いところでデータ処理を行うため、通信遅延の軽減ができます。高速でかつリアルタイム性を必要とする処理において、その効果を発揮するはずです。
ネットワーク負荷の軽減
エッジコンピューティングでは、データ処理をエンドユーザーにより近い場所で行った上で、必要なデータのみをクラウドに送信するため、通信量を軽減することができます。その結果、ネットワークへの負担を大幅に減らすことが可能です。
セキュリティ強化
エッジサーバーで必要なデータの処理を行ってから、データをクラウドに送信するため、インターネットという情報漏洩のリスクがあるネットワークに、大切なデータが流出しないようにすることができるのもエッジコンピューティングのメリットのひとつです。
エッジコンピューティングとクラウドコンピューティング
現在、ITのシステム構築の主流となっているのは「クラウドコンピューティング(クラウド)」です。クラウドコンピューティングとは、インターネットなどのネットワークを経由して、データストレージやアプリケーションといった、コンピュータのさまざまなリソースを提供するシステムの総称です。
クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングの違いは、データ処理が行われる場所がクラウドか、エッジ(よりユーザーに近い場所)かという点です。また、クラウドコンピューティングがデータを集中管理するのに対し、エッジコンピューティングは分散型という点でも異なります。
しかし、両者は互いに相容れない関係ではなく、またどちらかが優れているということもなく、補い合う関係にあるため、適切に使い分けをすることが大切だといえるでしょう。
エッジコンピューティングは、今後世界中でさらに発展していくことが予想されています。エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングのそれぞれの特徴やメリットを正しく理解して、上手に使い分けをしていきましょう。